Saturday, May 20, 2006

Re-Mastering

 2004年、リリースから10年を記念して、Nasの『Illmatic』がリマスター再発された。ヌケが良くなり恐ろしいほど音が厚くなっての登場で、今のレンジ感にあった、まさに新しい命を吹き込まれての再生であった。それは、ミキシングはもちろんだけれど、マスタリングの技術やテクニックが時代の音やトレンドを決定している一要因であることを、如実に物語る結果だったと思う。すでにビッグ・アーティストとなったNasの過去を、現在のファンに紹介するには万端のセットだと言えるかもしれない。しかし、当時の鮮烈な登場がまだはっきりと頭に残っている僕は、音幅の狭さと粗いながらの科学が詰まった、オリジナル・リリースのマスター音の方を好んでいる。ゲットーからの獣的で鮮やかなちからが漲った、初々しくも決定的なNasの姿は、僕にとってはこの埃っぽさのなかにこそ存在している。